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Webディレクター/デザイナーtakasyiのシネマアーカイブ。単純に観た映画を覚えとく手段のひとつになるメモ書き程度のテキスト。休みの前の日に、夜中遅くまで映画観るのとかたまらんですよね。

エッセンシャル・キリング / ESSENTIAL KILLING

ESSENTIAL KILLING

4

2010年 / ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー
監督:イエジー・スコリモフスキ
脚本:イエジー・スコリモフスキ / エヴァ・ピャスコフスカ
出演:ヴィンセント・ギャロ / エマニュエル・セニエ / ザック・コーエン / イフタック・オフィア / ニコライ・クレーヴェ・ブロック / スティッグ・フローデ・ヘンリクセン

この映画の主人公となるムハンマド(ヴィンセント・ギャロ)のセリフは一切ない。83分間ひたすら生死の境目をふらふらしながら逃げ惑う。大胆な構成ながら、この83分間のパフォーマンスは素晴らしい。

アフガニスタンの大地、耳に残るヘリの音、美しくもあり痛々しくも映る雪山、どれもがダイレクトに突き刺さる。よく聞くサバイバル・アクションという言葉からはなかなか想像もつかないけど、どちらかと言えばノンフィクションでありドキュメンタリーである。

イエジー・スコリモフスキ監督は“ここでは主人公のアクションは英雄的ではない”と話している。極限状態のムハンマドが生き残るためにとる本能の行動の数々がそれぞれ大きな見せ場のひとつにもなっている。“ESSENTIAL KILLING=絶対に必要な殺し”というタイトルを深々と考えざるをえないようなクライマックスもとても印象的でした。

イエジー・スコリモフスキ監督から“動物の強さを表現できる俳優”と言われたヴィンセント・ギャロの演技はお見事でした。

特に印象に残ったのは、護送車が事故を起こしていったんは逃亡を図るものの、裸足で雪山は辛すぎるぜ!と戻ってきてブーツを奪うシーンと、カラカラに乾いた喉を潤そうと母乳を飲むシーン。確かにあんな映像はヴィンセント・ギャロじゃなきゃ誰で撮るんだってくらいの迫力でした。

ムカデ人間 / THE HUMAN CENTIPEDE (FIRST SEQUENCE)

THE HUMAN CENTIPEDE (FIRST SEQUENCE)

3

2009年 / オランダ=イギリス
監督:トム・シックス
脚本:トム・シックス
出演:ディーター・ラーザー / アシュリー・C・ウィリアムズ / アシュリン・イェニー / 北村昭博

全体を通して感じる薄気味悪さ、博士の不気味さと強烈な存在感。どこかファニーゲーム(オーストリアの方)を観たときと似たような感覚を覚えました。もし自分だったらどこの部分にされるのがベストなのか。

トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン / TRANSFORMERS: DARK OF THE MOON

TRANSFORMERS: DARK OF THE MOON

4

2011年 / アメリカ
監督:マイケル・ベイ
脚本:アーレン・クルーガー
出演:シャイア・ラブーフ / ジョシュ・デュアメル / ジョン・タトゥーロ / タイリース・ギブソン / ロージー・ハンティントン=ホワイトリー / パトリック・デンプシー / ケヴィン・ダン / ジュリー・ホワイト / ジョン・マルコヴィッチ / フランシス・マクドーマンド

マイケル・ベイ、恐るべし。この完全なるヒットメーカーのビジュアルの追求はいったいどこまで行くのか。その先を考えただけでもゾクゾクする。

『トランスフォーマー リベンジ』の時に、あれだけ複雑化した衝撃的な映像の数々に劇場で度肝を抜かれたことが、たいした出来事じゃないんじゃないかと感じさせるくらいのボリュームで、終盤のシカゴでの人間・オートボットvsディセプティコンの大規模な市街戦なんかは、え!?まだやるのか!?ってくらいの勢いで、こっちはもうお腹いっぱいでゲップも出ちゃったりしてる状況なのに、そんなの構わずどんどんどんどん迫ってきます。

加えて今作では、兵士たちが降下するシーンで3Dカメラを構えながら一緒にダイブしてスカイダイビングの疑似体験をさせてみたりだとか、まるでムササビかのようにスイスイーっとビルの合間を飛ばせてみたりだとか、ロボット以外でもとても手の凝った演出が目立ちました。

ある程度このへんの要素は求めて劇場に足を運んでるわけですが、はるかに想像以上のモノでした。エンターテイメントとして大満足。ちなみに破壊した車の数は532台なんだそうです。

ストーリーとしては、アポロ月面着陸の裏側ではいったい何が!?的な導入部で、歴史上の出来事を用いた構成は引き込まれやすいし好印象でした。誰しもが持つ、月や宇宙への興味や想いの部分をくずぐり、実際のアポロ11号の乗組員を登場させたり、ケネディ大統領とのやりとりもとても上手に興味深く作られてたなぁ。

話が終盤へ進むにつれやっぱりダレちゃった印象。「え?話飛んでね?」みたいなのもありましたが、すでにそのころの焦点は大都市での激戦という部分に当たってるので、どーでもいいっちゃどーでもよかったです。もっと的確に言うと、どーでもいいやとも思うヒマもないくらいの映像体験をしてたから、ってところでしょうか。

それでも、脚本家協会のストと重なって早く脚本を仕上げなきゃいけなくなったエピソードがある前作よりはきちんとまとまってはいた気がします。

そういう意味では、サムの周りで関わるキャストたちが豪華。ジョン・マルコヴィッチがこれまたいい具合?と言ったらいいのか、サムが入社する会社の上司役で怪演っぷりを披露。彼の台詞も「私を驚かせてみろ」など、印象に残るものが多かった。もうちょっと最後まで絡んで見たかった気もしますが、あまりにもその怪演が目立ってインパクトを与えちゃうのもアレか。

3作連続で出演し今作も活躍が目立ったジョン・タトゥーロといい、国家情報長官として登場したフランシス・マクドーマンドといい、このキャストだけにスポット当てたらコーエン兄弟のブラックコメディ寄りの新作か!?と思わせるような勢いでしたが、このバランスの取り方はけっこう好きだったりします。

あと、やっぱり言っときたい、バンブルビー可愛すぎる。

ロビン・フッド / ROBIN HOOD

ROBIN HOOD

3

2010年 / アメリカ=イギリス
監督:リドリー・スコット
脚本:ブライアン・ヘルゲランド
出演:ラッセル・クロウ / ケイト・ブランシェット / マーク・ストロング / ウィリアム・ハート / マーク・アディ / オスカー・アイザック / ダニー・ヒューストン / アイリーン・アトキンス / ケヴィン・デュランド / スコット・グライムズ / アラン・ドイル / レア・セドゥー / マックス・フォン・シドー

ストーリーとしてはご都合主義的な面もあり、雑だなと感じたりツッコミどころも多い気もしなくはないけど、12世紀末を舞台とした物語をここまでテンポ良くスペクタクルに壮大な映像美を交えて作り上げちゃうあたりは、さすがリドリー・スコットというところでしょうか。

プライベート・ライアンのノルマンディー上陸作戦のシーンが脳内をオーバーラップしてくるかのような壮絶クライマックスの見応えは十分でした。ゴドフリー(マーク・ストロング)がむちゃくちゃ不気味。自分の首に矢が刺さって笑っちゃうヤツをはじめてみた。

SUPER8 / スーパー8

SUPER8

4

2011年 / アメリカ
監督:J・J・エイブラムス
脚本:J・J・エイブラムス
出演:ジョエル・コートニー / エル・ファニング / カイル・チャンドラ / イリー・グリフィス / ライアン・リー / ガブリエル・バッソ / ザック・ミルズ / ロン・エルダード

誰もが知っている、誰もが観たことのあるいくつかの名作映画のシーンをついつい重ね合わせて見入ってしまうような、ノスタルジックな部分をやたらと突っついてくる。また、対照的に、それらをまったく知らない子供たちが観たとしても素直に充分楽しむことができる。この両面を兼ね備える映画なんて、そうはないし、そうは作れない。

J・J・エイブラムスが8歳のときに手にして撮影を楽しみ、映画作りに目覚めさせたカメラ“SUPER 8”。同じ頃にスティーヴン・スピルバーグ監督の作品をいくつも観て、大きな影響を受けていたという。のちにこうして共に映画を作ることになるが、『SUPER 8』はJ・J・エイブラムスが『JAWS』『未知との遭遇』『E.T.』『グーニーズ』『宇宙戦争』などなどのスティーヴン・スピルバーグ監督作品へのオマージュを捧げまくっている、オマージュ詰め合わせパックのような映画となっている。

ストーリーや全体的な構成は『E.T.』にとても似ていて、『グーニーズ』を感じさせるようなシーンとか、そういう部分の感情なんてコントロールできないから、本当にたまらなかったです。しかも露骨(モロだったのもあるけど)にではなく、やさしく、ほどよく、なんとなく。この辺のバランスの取り方は素晴らしいんじゃないかと感じました。必死にチャリをこいで街を駆け抜けたくなりました。

もしかしたら世界のどこかで8ミリカメラの魅力に取り憑かれ、『SUPER 8』を観て大きな衝撃を受けている少年がいるかも知れない。J・J・エイブラムス、そしてスティーヴン・スピルバーグがそうであったように、映画として後世に伝わっていくであろう瞬間を肌で感じることができたような一本でした。チャールズ監督の可愛いゾンビ映画も必見。

観客が事前にいろいろ知りすぎるのは映画にとっていいことではないと考えるJ・J・エイブラムスは、製作として携わった『クローバーフィールド』を思い起こさせるような手法で情報を拡散させ、公開ギリギリまで徹底的に隠すスタイルをとった。

激しい列車事故が起こり、最後のカットでは貨物を何かが突き破ってくるかのような描写で締めくくったトレーラーを初めて観たときは、これはまたヤバそうなのが公開されるんだなと鼻息も荒くなったけど、フタを開けてみればこの内容で、とてもじゃないけど思ってもみなかった。エイリアン自体は『クローバーフィールド』のそれにそっくりなんじゃないか、ってのは頭をよぎったけど、まさかあんな瞳で見つめられることになるとは思ってもみなかった。