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Webディレクター/デザイナーtakasyiのシネマアーカイブ。単純に観た映画を覚えとく手段のひとつになるメモ書き程度のテキスト。休みの前の日に、夜中遅くまで映画観るのとかたまらんですよね。

ヒミズ

ヒミズ

4

2011年 / 日本
監督:園子温
脚本:園子温
出演:染谷将太 / 二階堂ふみ / 渡辺哲 / 吹越満 / 神楽坂恵 / 光石研 / 渡辺真起子 / 黒沢あすか / でんでん / 村上淳 / 諏訪太朗 / 堀部圭亮 / 川屋せっちん / 窪塚洋介 / 吉高由里子 / モト冬樹 / 西島隆弘 / 鈴木杏

“素晴らしい青春映画”と“いつまでも心に残る映画”が同時に2つ誕生した。染谷将太と二階堂ふみのスクリーンから溢れ出さんばかりのエネルギッシュなラストシーンがあまりにも胸に突き刺さりすぎて、しばらくどうすることもできずに劇場の椅子から動けなかった中、そんな風に感じていました。

園子温監督初となる原作ものとなって、古谷実×園子温の『ヒミズ』が生まれたわけだけど、撮影中に東日本大震災が起きたことで、原作に基づいて用意していたシナリオを描き直したという。ここが大きなポイントとなっているのは言うまでもないけど、10年前の『ヒミズ』ではなく、2012年の『ヒミズ』になっている。若い男の子と女の子が直面する葛藤や悩みの行く末を爆発させる青春映画の本質に触れると同時に、今の日本やこれからを背負って立つ若者に向けて、映画という格好でこれ以上ないメッセージを届けていると強く思いました。

「がんばれー!」という、日常的で既にありふれてるはずの言葉が、これほどまで力強く響き渡るものなのか。しつこいようだけど、“園子温版”の住田と茶沢のクライマックスでのランは、そういう意味で破壊力がありすぎて、余韻からなかなか抜け出せません。

『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』などなど、園作品には“言葉にならない圧倒的な描写力と演技力”で打ちのめされることが多いけど、もはや彼の作品には欠かせない俳優さんたちの表現力も素晴らしかった。でんでんしびれた。光石研しびれた。

そんなたくさんの豪華な個性派に囲まれ、よりいっそう主役の2人が強烈に映ったということもあるだろうけど、染谷将太と二階堂ふみは第68回ヴェネチア国際映画祭で最優秀新人俳優賞をダブル受賞したことは深くうなずける。

ピラニア 3D / PIRANHA 3D

PIRANHA 3D

3

2010年 / アメリカ
監督:アレクサンドル・アジャ
脚本:ピーター・ゴールドフィンガー / ジョシュ・ストールバーグ
出演:エリザベス・シュー / アダム・スコット / ジェリー・オコンネル / ヴィング・レイムス / ジェシカ・ゾー / スティーヴン・R・マックイーン / ケリー・ブルック / リカルド・アントニオ・チャビラ / ディナ・メイヤー / ポール・シェアー

エロ、グロ、ピラニア。たまにはいいもんです、こういうノリのも。いい映画だと思います。

ハンナ / HANNA

HANNA

4

2011年 / アメリカ
監督:ジョー・ライト
脚本:セス・ロクヘッド / デヴィッド・ファー
出演:シアーシャ・ローナン / エリック・バナ / ケイト・ブランシェット / トム・ホランダー / オリヴィア・ウィリアムズ / ジェイソン・フレミング / ジェシカ・バーデン

ジョー・ライトが“不思議な天使のようだ”と語る16歳の少女ハンナがスクリーンいっぱいに広がる。『ハンナ』のイントロダクションでもあり大きなポイントともなる“新たなヒロイン像”となったシアーシャ・ローナンは、『ニキータ』のアンヌ・パリロー、『レオン』のナタリー・ポートマンに続き、強烈なインパクトを残した。

脳裏に焼き付く「心臓、はずしちゃった。」というハンナの生き様がそのまま表れているかのようなオープニングとラスト。

そんな“無垢で透明感あふれる敏腕暗殺者”と対照的ともなっているのが、魔女のような出で立ちで迫るCIA捜査官マリッサ演じるケイト・ブランシェット。ジョー・ライトは実際にグリム童話のおとぎ話になぞらえて撮ったということだが、「サスペンス・アクション×おとぎ話」という異色を放つ一本になっている。

『ハンナ』には映画を観に行ったときにはあまり感じない音楽における“ライヴ感”を強く感じることが出来た。ジョー・ライトはケミカル・ブラザーズの長年のファンとのことだが、映画における音楽監督は初挑戦となる彼らは、ハンナの繊細かつ複雑な心理状態を見事に表現した。

ハンナがCIA内部から脱出するシーンでは、背景や照明も工夫され、彼らの十八番とも言えるノイジーで重低音の効いたサウンドと映像が展開される。鳥肌が立ち、アクションシーンを観ているのか、突如としてダンス・フロアに引きずり込まれたのか、よくわからない感覚にすらなった。

ブラック・スワン / BLACK SWAN

BLACK SWAN

4

2010年 / アメリカ
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:マーク・ヘイマン / アンドレス・ハインツ / ジョン・マクラフリン
出演:ナタリー・ポートマン / ヴァンサン・カッセル / ミラ・クニス リリー / バーバラ・ハーシー / ウィノナ・ライダー / バンジャマン・ミルピエ / クセニア・ソロ / クリスティーナ・アナパウ / ジャネット・モンゴメリー / セバスチャン・スタン / トビー・ヘミングウェイ

ダンスのトレーニングに撮影前の10ヶ月ほどを費やしてから臨んだという“バレエ”という点も去ることながら、複雑極まりない感情が揺れ動き、交差し、己と必死に闘うヒロイン・ニナを演じるに当たり、精神面でも相当過酷な役作りを続けていったであろう心打たれる迫真の演技。一目瞭然でした。

『レオン』のマチルダ役で衝撃を受けてから約16年、純真で愛らしい繊細な白鳥と邪悪かつ官能的な黒鳥を女優魂たっぷりでニナを演じた彼女の姿をスクリーンで観ずにはいられない。

レッスン場、楽屋、自宅の部屋、トイレ、バスタブ、電車の窓などなど、主人公であるニナが「鏡」もしくは「鏡の役割に近いもの」に囲まれてるようなシーンが数多く登場する。(撮影も大変だっただろうな...と)

鏡はスリラーやホラーにとって、もはや欠かせない定番中の定番アイテムなのは改めて言うことでもないけど、ニナの場合はそれらに不気味なモノが映り込んでるといった類ではなく、自分自身の心境の変化や自分の知らないもう一人の自分が幻覚的に見える、というのが挙げられる。

物語序盤にレッスン場で自分のダンスを見るために見ている鏡にはなにも変化がないのに、そのレッスンへ向かうために乗った電車の窓には悪魔のようなものが映し出されていた一連の流れはとても印象的でした。

終盤ではその鏡を自ら壊して、破片で自らを刺してしまい、晴れて完璧なブラック・スワンへと変身することになる。ここからラストにかけての映像(ダンス)と音楽と効果音(拍手)には圧倒されっぱなしでした。

口紅とか小物を盗んじゃうくらい憧れだった先輩プリマ・ベス役を演じたウィノナ・ライダーや、自分とはまったくタイプが異なり主役を取られるんじゃないかと怯えてた色っぽいライバル・リリーを演じたミラ・ニクスも良かったです。ニナは寝るときのオルゴールからケータイの着信音までもが「白鳥の湖」。

ハートロッカー / THE HURT LOCKER

THE HURT LOCKER4

2008年 / アメリカ
監督:キャスリン・ビグロー
脚本:マーク・ボール
出演:ジェレミー・レナー / アンソニー・マッキー / ブライアン・ジェラティ / レイフ・ファインズ / ガイ・ピアース / デヴィッド・モース / エヴァンジェリン・リリー / クリスチャン・カマルゴ

2004年、イラクはバグダッドで任務に就くアメリカ軍爆発物処理班の話。ほとんどドキュメンタリータッチで描かれる戦場は“爆発物がいつどこで爆発するかわからない”感を見事に演出していて、常に一定の緊迫感がみなぎるままエンドロール。たまに挿入されてるスローモーションの映像がたまらんかったです。

冒頭で出てくる「戦争は麻薬のようなものである」というメッセージが物語を構築するように、爆発物にハマっちゃってもうどうしよもなくなっちゃった男もいたりするんです、男ってコレだから困りもんだわー、という部分にフォーカスされつつ、恐怖、狂気、孤独などと同時に戦場においてのヒロイズムとその代償を投げかけている。

そしてやっぱり脱帽なのが、男のハードボイルドな生き様を表現する女性監督キャスリン・ビグロー。873個の爆弾を処理してその部品を集めるのが趣味とか、「大人になったら好きなものはひとつふたつしか残らない。おれの場合はひとつだ。」とか、家に帰ってきたかと思ったらまた期間365日で任務に出ちゃって、すべてを物語るかのような後ろ姿とか、もう男臭くてしょーがない。素晴らしいよビグロー!