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キャスリン・ビグロー『ゼロ・ダーク・サーティ』鑑賞

ZERO DARK THIRTY

キャスリン・ビグローの最新作『ゼロ・ダーク・サーティ』をTOHOシネマズ錦糸町にて鑑賞してきました。

あくまでも“劇映画”

取材しているうちに、実際にビンラディンの居場所を突き止めたCIA職員の中心に女性がいたと知って驚きました。それ以上に驚いたのは、その女性の存在がまるで報じられていないことです。『ハート・ロッカー』では男性の目からテロ戦争を描いたので、今回は女性の立場から描こうと決めました。

via: キャスリン・ビグロー

ZERO DARK THIRTY 2

『ゼロ・ダーク・サーティ』は、ビンラディンの居場所を突き止めるべく孤軍奮闘するCIAの若き女性情報分析官マヤのプロセスにスポットを当てた事実に基づく作品だけど、監督キャスリン・ビグローと脚本家マーク・ポールが、当事者たちから念入りに取材を重ねて物語を構築したフィクション映画だというのが信じられないし、これらをわずか2年間でこれほどまでのものに仕上げたというのがもっと信じられない。

上映時間は160分。この2時間強の間、観客たちはマヤのビンラディン捜索を追うとともに、ドキュメンタリーなのかフィクションなのかという自問自答を繰り返しながら、どう受け止めればいいのか半ばパニックに陥りそうなまでの行き場のない空間に閉じ込められる。

高校を出てからCIAに入り、ビンラディン捜索にすべてを捧げてきたマヤという一人の女性がどう変わっていくかという劇映画。
初めて尋問に立ち会ったり、相手の罠にはまり仲間を自爆テロで失ったり、自ら爆発テロに巻き込まれたり、一歩家を出れば狙撃されたりする中で、ボロボロになりながらもビンラディンに近づいていく彼女。死体袋を開けて彼の動かぬ姿を見たとき何を思ったのか、これから自分はどこへ向かうのか。それらを問い詰めてきます。

証拠はつかめないものの、ビンラディンの隠れ家だと思われる建物を見つけてから襲撃のGOが出るまで、相当な期間“待機”することになる。マヤは動こうとしない上層部に苛立ちをぶつけ、“何もしないというリスク”だと主張し、会議の席でCIA長官に「お前は誰だ?」と聞かれて「ビンラディンを見つけたクソッタレです。」と言い放つ。このシーンはとても印象的でした。

隠れ家襲撃の夜

“ゼロ・ダーク・サーティ”とは、午前0時30分を意味する軍の専門用語で、ビンラディンの潜伏先にネイビーシールズ(特殊部隊)が踏み込んだ時刻のこと。

ZERO DARK THIRTY 3

クライマックスでネイビーシールズがビンラディンの隠れ家を襲撃する一部始終がとにかく素晴らしい。

キャスリン・ビグローはこのシーンの撮影について、スタイリッシュな演出は避け、作りモノに見えないように細心の注意を払い、逆に抑えることでリアルさの美学を表現したと言っているけど、最高潮に達したこの臨場感と緊迫感は、この上ないエンターテイメント性を持ち合わせていた。

ちなみに、この隠れ家も入手した写真を元に、原寸通りに壁のタイルまで忠実に再現して建てたようです。作品全体を通して言えることだけど、彼女の徹底したリアリズムを感じることのできるエピソードです。奇しくもこの襲撃シーンは、ビンラディン殺害から1周年にあたる日に撮影されたという。

この襲撃シーンを観るだけで1,800円払ってもいいです!と言っても言い過ぎじゃない。こんな映像を突きつけられたら、現実との区別がつかなくなっちゃうよ!と軽く怒りすら覚えてくる。これが現場なんだと言わんばかりの淡々とした冷酷さ。スゴイ、怖い、スゴイよ、怖いよこんなの、あんまりだよ。

category

Movie

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