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木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第2弾

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第2弾

1月3日の木曜Foot!で放送されたイトゥラルデ・ゴンサーレスのインタビュー第2弾です。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第2弾 2

──失礼かもしれませんが、どうしても知りたいので聞かせてください。
プリメーラのレフェリーはどれくらい給料を貰えるのでしょうか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
日本人に失礼な人なんていません。みんな礼儀正しいですからね。
教えましょう。レフェリーの収入の4割程は税務署に持っていかれます。税金として45%ですね。ですから1試合で手元に残るのは1000ユーロ(約12万円)です。

──ということはプロではあるわけですね?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
プロといえばプロですね。わざわざトレーニングをして専門的にやっていますからね。
でも社会保険はないし、病院代もトレーニングのコーチ代も自腹です。何とかしないといけない問題ですね。フットボールだけしていればいい選手のようなプロとは違います。38歳になったらほとんどのレフェリーは2部に落とされます。そして45歳で定年です。ですからこのように別に仕事を持たなければいけません。

──レフェリーもプロ化すべきと考える人は多いと思いますが...

イトゥラルデ・ゴンサーレス
より労働時間を長くしたからといって良いジャッジができるわけではありません。1日10時間のトレーニングをしたところで、レフェリーのミスはなくならないのです。誰もが職場でミスを犯しますよね?私は試合前、アシスタントレフェリーにいつも同じことを言っていました。
『今日も我々はミスをする』『今日も90分の間に間違いを犯すだろう』とね。ミスは仕方がないんです。瞬時のジャッジが求められますからなおさらです。
おまけにリーガはラテン文化のフットボールですから、選手は巧いだけでなく演技力にも長けています。相手を蹴ったのに蹴ってない演技をしますし、蹴られてないのに蹴られたような演技をします。誰も助けてくれません。レフェリーは孤立無援なんですよ。とにかく我々はミスを犯す前提でピッチに立っています。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第2弾 3

──あなたにとって『良いレフェリー』とは?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
『ミスを犯した後も冷静なジャッジを続けられる者』です。
今もプリメーラの試合のピッチはカメラだらけですし、PKをとった3秒後にジャッジが間違っていたかどうか分かってしまいます。観客の反応でね。テレビでもラジオでも放送されています。
アウェイチームにPKを与えて3秒後に観客の野次が収まっていれば正しいジャッジ、5秒たっても観客が騒ぎハンカチが振られブーイングされているなら、それは間違っていたということです。そこでレフェリーの資質が試されます。残り70分間、そのミスを自覚しながら落ち着いてジャッジをし続けられるかどうか。大事なのはそれができるかどうかですね。
自分が下したジャッジは振り返らず、次のプレイに立ち向かう。済んだことをいちいち『考えないレフェリー』こそ、私にとって最高のレフェリーなんです。『考えない』というのは要するに、見て、吹いて、後は知らないということです。考えたら『さっきPKとったし、退場させたし、ここで吹くと...』となります。それではダメ。見たら吹く。考えないレフェリーこそ最高のレフェリーです。

──イタリアのコッリーナやイングランドのハワード・ウェブが世界最高のレフェリーという意見に同意しますか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
どのレフェリーにも良い点はありますから、誰が最高とは言えません。コッリーナとハワード・ウェブにとって有利だったのは、選手たちの信頼を勝ち取っていたことです。私は『一番大事なのは選手に信用されることだ』と若いレフェリーによく言っていました。
レフェリーの技量が選手に信用されたら、PKの場面で間違ったジャッジをしても選手たちは分かってくれます。『このレフェリーは誠実な男だ』と選手たちがレフェリーを信用しているからです。
彼らの場合で言うと、コッリーナはスキンヘッドで長身でしたよね?もし背が低くて髪がフサフサだったら、あれほど有名にはならなかったでしょう。本当ですよ。ハワード・ウェブも同じです。コッリーナが普通の外見であったなら『世界最高』なんて言われ方はされなかったと思います。外見も重要なんです。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第2弾 4

──では選手に信用されるにはどうすればいいですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
良い質問です。まずはすべてのクラブを平等に扱うことです。
よく『マドリーやバルサにはPKを与えるが、小さなクラブは無視なのか?』と言われますが、それは違います。メッシに対しても、無名の選手に対しても同じ態度をとることです。すると『スターと同等に扱われた』と選手は思い、そのレフェリーを信頼するようになります。あとは当たり前ですが正しいジャッジを多くして、ミスをできるだけ少なくすることです。選手もテレビを見ますから、ミスを続けていると困ったことになる。正しく裁くことです。

──あなたはメディアから批判されたにもかかわらず...

イトゥラルデ・ゴンサーレス
何度もね!常にメディアとはやり合ってましたから!

──選手たちはあなたこそ最高のレフェリーだと認めていました。おかげで安心して試合に臨めたのではないですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
というよりはさっきも言いましたが、私は自分を信じ、見たとおりに笛を吹いてきました。後で何と言われようとね。その誠実さが選手たちに伝わっていたのだと思います。『アイツはおかしい』と言われることもありました。でも選手たちとは常に会話をしていました。メッシとC.ロナウドの面白い話をしましょう。
ある試合でメッシが何人も抜き去ってすごいゴールを決めました。その後こちらに歩いてきて『すごかったでしょ?』と私に言ってきたので、『そんなのはオレは何度も決めているよ』と言い返してやりました。メッシは呆然としていましたよ。『この人何言ってるんだ?』ってね。
C.ロナウドの方は、ある日『卓球が得意だ』とメディアの前で話していました。私は自宅に卓球台がある程大好きなので、試合前に『大口を叩くなよ』と言ってやりました。彼は驚いて『何のことだ?』と言いました。『卓球が上手いって?一番上手いのはオレだ!いつでも胸を貸してやるぞ!』と私が言うと、彼は私を下から上までなめるように見て、『オレはフットボールでも一番、卓球でも一番だ』と言い、走り去って行きました。その後、ベティス対マドリーのゲームが行われました。私が怪我をした最後の試合です。彼はハーフタイムに『イトゥ、どうした?』と言い、私のところに訪ねてきました。私は『怪我をした』と言うと、『早く治して卓球で勝負だ』と言ってきました。
本当の話です。私とメッシやC.ロナウドとの関係はそんな感じなんです。偉大な選手なのにね。私は幸運なことにロナウジーニョ、ロマーリオ、メッシ、C.ロナウド、ロナウド、ジダン、ベッカムといった偉大な選手の試合を裁いてきましたが、レフェリーに逆らった選手は一人もいません。偉大な選手たちはレフェリーに従います。自分が他の選手たちよりも優れていることを自覚してフットボールを楽しむ余裕があるんです。選手間で文句は言いますが、レフェリーには逆らいません。我々をリスペクトしているからです。
例えばブラジルのロナウドはロボットのようでした。何事にも無関心でまったく話をしません。黙ったままボーっとスタンドを眺めてね。ロマーリオもロナウジーニョもそうです。メッシもレフェリーには何も言いません。ケチをつけたりはしません。おもしろいことにスーパースターは決まってレフェリーに従うのです。
確かに私は7年連続で選手が選ぶ最優秀レフェリーに選出されました。勇気づけられましたよ。今後も良いジャッジを続けなければと思いました。しかしスペインのメディアとの関係は最悪でした。文句を言われるたびに反論していましたからね。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第2弾 5

──モウリーニョとも知り合いですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
いえ。ただマドリーが0対5でバルサに負けたあの有名な試合を担当しましたけどね。
試合後、こちらに来て皮肉たっぷりに『良かったよ、よくやってくれた』と私に言ったので、『おいモウリーニョ、知らないと思うから言っておくよ。スペインではピッチを仕切るのは私だよ。君じゃない。』と言ってやりました。『ボスは私だ』ってね。それで我々の間には問題なしです。

──プリメーラでの17年間のキャリアをどう評価しますか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
夢のようでした。
今振り返ってみても、17年間もやっていたなんてとても思えません。本当にあっという間でした。ですから娘たちには『何をするにも楽しめ』と教えています。気づいたらもう終わってしまっているからです。私は恵まれていました。世界最高峰のリーグで笛を吹き、世界最高の選手たちと時を同じくしたのですからね。
多くの国を訪れ、多くの文化に触れ、多くの人に出会えたのも最高の経験です。ですからもう一度レフェリーをやる機会があるのなら、もっと一つ一つを噛みしめながら熱を込めてやるでしょうね。当時何でもないと思っていたことの価値が今になって分かるんです。私はあの時、どれだけ恵まれている環境にいたかを正しく捉えていなかった。物の価値というのは、失ってから気づくものですね。『あれは本当に素晴らしいものだったんだ』ってね。
今後さらにそれを強く思うでしょう。自分がやっていることの価値が分かっていなかった。だから今娘たちにはこう伝えています。『今やっていることのすべてを楽しめ』『1分1秒を心の底から満喫しなさい』とね。

2013.02.07 [Thu] 放送 / インタビュアー:菅原慎吾

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第1弾

category

Football

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