公開を楽しみに待ちわびていたジョエル・コーエン&イーサン・コーエンのコーエン兄弟最新作『シリアスマン』をヒューマントラストシネマ渋谷にてさっそく観てきました。
刺激的で凶暴で面白さに満ちた悲喜劇
超一流のキャストを並べたド派手なブラックコメディ『バーン・アフター・リーディング』に続く今作『シリアスマン』では、主演に映画界ではほぼ無名なマイケル・スタールバーグを抜擢し、平凡で真面目な中年ユダヤ人物理学教授ラリー・ゴプニックの転落スパイラルなヒューマンドラマを描く。日本では「アカデミー賞受賞監督たちが本当に撮りたかった映画はこれだ!」と題して世界の素晴らしい監督たちの作品を“映画館”で公開し続けることを目標にして始動しているDirector's Driven Projectの第2弾として公開。
ブラザー・コーエン・パック
この映画は1967年のミッドウエスタン郊外にあるユダヤ人コミュニティーを舞台にしている。ジョエルと僕はミッドウエスタン出身だから、この設定は僕らの子供時代を思い起こさせるものだ。社会的環境、舞台全体は僕らにとって重要で、この物語の展開の大きな部分を占めていた。育った場所というのは自らのアイデンティティの一部だ。たとえ長い間離れていても、そこから逃れることはできない。
via: イーサン・コーエン
何年も前に僕らはユダヤ教の成人式を迎え、昔のラビに会いに行く少年についての短編映画を作ろうと思っていた。そのラビのキャラクターは、僕らが子供の頃に知っていた、あるラビをおおまかにモデルにしたものだった。
via: ジョエル・コーエン
とイーサン&ジョエルが語るように『シリアスマン』のベースにはコーエン兄弟の少年期のルーツを辿る要素がある。そこに、憎めないんだけどなんかちょっとイラッとして癖になる各キャラクターであったり、ドミノ倒しのように次々に不条理で厄介なトラブルに巻き込まれたり、背筋が凍るような凶暴なビジュアルを突きつけてきたり、シュールなユーモアをテンポ良く放り込んできたりと彼らの作品では“おなじみ”のシーンもたっぷり盛り込まれている。言わば『シリアスマン』はブラザー・コーエン・パックのようなもので、思う存分楽しめる内容でした。
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